糖尿病の概要~いまや国民の5人に1人の割合に
典型的な生活習慣病であり、その名をよく知られた「糖尿病」。
現代の日本において着実に患者数が増えつつあるこの病気の恐ろしさについて、実はその中身をよく知らないという方も、案外と多いのではないでしょうか。
糖尿病は世界的にも患者数が急増しつつある病気ですが、日本人はもともと後述する「2型糖尿病」になりやすい遺伝的素因があるともいわれており、糖尿病の潜在患者数の増加は、欧米諸国よりも相当早いペースで進んでいる模様です。
今日、日本における糖尿病の患者数は、およそ700万人。
それにもかかわらず、そのなかで実際に治療を受けている人の数は、わずか200万人強程度にとどまっています。
治療を受けている人の数が患者数に比べて圧倒的に少ない理由としては、糖尿病は初期段階で自覚症状がないために、そのまま治療を受けない人が多いからとも言われています。
健康診断ではじめて高血糖を指摘され、自分が糖尿病の予備軍となっていることに気づき、がく然とする方も多いようです。
膵臓(すい臓)でつくられるホルモン「インスリン」は、血糖値を下げる働きをします。
このインスリンの分泌や作用が充分でなくなると、血液中のブドウ糖が有効に使われなくなります。
そうなると、血液中のブドウ糖の量(血糖値)が高くなり、ひいては体内の代謝機能に異常をきたすことになります。
これが「糖尿病」で、血糖値が高くなると尿にも糖がでてしまうことからこの名で呼ばれています。
日本人は、遺伝的にもインスリンの分泌量が欧米人の50~75%程度だといわれており、もともと糖尿病になりやすい体質であることがわかっています。
糖尿病の急速な増加の背景には、インスリン分泌能力がそれほど高くない日本人の食卓の欧米化(肉食中心・高脂肪・高カロリー)が広く進み、高血糖状態が誰の身にも生じやすくなっていることもあるわけです。
糖尿病の真の恐ろしさは「合併症」にあり
代謝機能が異常な状態を長い間放置すると、体内の血管が詰まり、眼や腎臓・神経に障害が起こる、いわゆる「糖尿病性合併症」をきたすことになります。
この「合併症が引き起こされること」が、糖尿病においてもっとも恐ろしい点と言えるでしょう。
体内の細い血管が詰まった場合には、「三大合併症」といわれる眼(糖尿病性網膜症)・腎臓(糖尿病性腎症)・神経(糖尿病性神経症)に対する合併症が引き起こされます。
糖尿病が進んだため、失明・人工透析さらには壊疽(えそ)のために足の切断を余儀なくされた患者さんのお話などを、皆さんもこれまでどこかで見聞きされたことがあるのではないでしょうか。
また、体内の太い血管が詰まった場合は「動脈硬化」が引き起こされ、ひいては脳梗塞・脳卒中・心筋梗塞などを招くことになります。
さらには病気の進行によって体の抵抗力も衰え、感染症にもかかりやすくなります。
糖尿病は「尿に糖がでていなければ糖尿病ではない」と誤解されることが多いのですが、それは間違いです。
むしろ尿に糖がでている段階は、「糖尿病がすでにかなり進行している状態」と認識するべきなのです。
糖尿病とは「高血糖の状態が続く病気」であり、糖尿病を発症するかしないかのギリギリのところにいる「予備軍」は、現在の日本ではかなりの数にのぼっています。
そしてそのギリギリのところから転落して糖尿病を発症してしまうと、もはや完治することはできず、基本的には残りの一生を糖尿病とつきあっていくことになります。
ただし発症から初期の段階で適切な治療を受け、生活習慣を改善することにより、健康な人とほぼ変わらない社会生活をおくっていくことが可能です。
「自覚症状がないから」と、治療もせずこれまでと変わらない生活をいつまでも続けていると、やがては上で述べたような恐ろしい合併症が、いつかその後の人生の行く手に必ず立ちふさがることになるのです。
加えて合併症を発症してからの治療は、治療行為自体も相当大変かつ困難になり、また透析やリハビリなどに一日のかなりの時間をとられることから、日々の生活の質が大きく下がってしまうことになります。
厚生労働省の2006年の国民健康・栄養調査によると、国内の糖尿病の該当者は予備軍を含めると1,870万人にも達し、この4年間で15%強も増加するハイペースで推移しています。
なかでも40~74歳の中高年男女の実に3割以上が、糖尿病及びその予備軍と推計されています。
糖尿病の種類~2型糖尿病が95%
糖尿病の原因・なぜ糖尿病になるのかについては、実はいまだきちんと解明されたわけではありません。
しかし糖尿病そのものではなく、「糖尿病になりやすい体質の家系」という意味で、やはり遺伝による部分もあるとされています。
したがって、家族や近い親戚に糖尿病の方がいる場合は特に注意し、日頃の生活習慣にも気を配る必要があります。
糖尿病は、膵臓が障害をおこしてインスリンが分泌されなくなる「1型糖尿病」、あるいは妊娠の影響でインスリンの分泌が抑えられてしまう「妊娠糖尿病」など、いくつかの種類に分類されています。
なかでも糖尿病の95%以上を占めているのが、偏った食生活や運動不足などのいわゆる生活習慣が深く関わってくる「2型糖尿病」です。
一般に肥満者に多く見られるとされていますが、外見的にはやせていても2型糖尿病の患者は数多く存在しています。恐ろしいことに、肥満の子どもにも発症が見られるケースもあります。
肥満すなわち脂肪細胞が大きくなると、膵臓が必要以上のインスリン分泌を迫られるために、最終的にそれに対応しきれなくなって発症するともいわれています。
2型糖尿病ないしその予備軍は、日頃の自覚症状が乏しいために、健康診断で指摘されてはじめて気づくというケースが圧倒的に多いようです。
数値でいうと、健診時に「空腹時血糖が110㎎/dlを超えた人」はギリギリのラインにいるということで「境界型」と呼ばれ、精密検査を受けて糖尿病かどうかを確認することになります。
糖尿病の治療~中心となるのは食事療法
いったん糖尿病を発症してしまった場合、治療の基本は「食事療法」と「服薬」になります。
食事をとることでインスリンへの需要が高まるため、これを必要な範囲に押さえ血糖値をコントロールする必要があるためです。
日頃の生活習慣の状況などをかなり細かい点まで調査したうえで、医師に一日に必要なエネルギー量を処方してもらい、その範囲をきっちりと守った食生活を行う必要があります。
これを半年程度行い、それでも血糖値が下がらない場合に、インスリンの分泌や働きをよくする薬を併用していくのが一般的です。
ただし、糖尿病の内服薬はすべての糖尿病に有効なわけではなく、また量を過ぎたりあるいは食事量が少なすぎたりした場合には血糖値が下がりすぎる副作用(低血糖)を起こすことがあるので、服薬においては医師の指示と処方によく従うことが大切です。
なお、糖尿病の食事療法については関連サイト「糖尿病 4分でわかる食事と食事療法のポイント」をご覧ください。
ちなみに糖尿病の治療というと「インスリンの注射」をイメージされる方も多いのですが、これは一般に1型糖尿病の患者がインスリン補充のために行う治療法で、2型糖尿病では必ずしも必要とされないものです。
2型糖尿病においては、食事療法や服薬療法、それに運動療法を加えるやり方で良好な結果をもたらすことができるとされています。
特にウォーキングや水泳などの適度な有酸素運動を続けると、体内の余分な糖分が筋肉で使われて血糖値が低下するため、インスリンの働きがよくなると共に体内代謝の改善にも役立ちます。
糖尿病の予防~イコール「生活習慣病全般の予防」
上述した糖尿病になるかならないかの「境界線上にいる方」がとるべき予防法のうち、もっとも重要なのが「食習慣の見直し」になります。
「カロリーオーバー→肥満→血糖値の上昇」という連鎖を、起こさないようにするためです。
具体的には、まず脂肪分の多いメニューを極力外すこと。
揚げ物や油を多く使った炒め物を控え、またアイスクリームや清涼飲料水など糖分が多く含まれた甘い物も原則避けるようにします。
過食を避け、ローカロリーで食物繊維を多く含む海草類や野菜などを積極的にとるようにします。
食事時間も一日三食をできるだけ一定時間にそろえ、飲酒も適量にとどめる。
なるべくなら、週に何日かの禁酒日を設けるようにしたいものです。
タバコはさまざまな合併症を促進するリスクが高いので、禁煙を目指すべきです。
また運動療法としては、有酸素運動が効果的とされます。
通勤の行き帰りの一駅分を歩くようにするなど、体力にみあった適度な運動を日頃から心がけるようにしましょう。
以上が食事療法・運動療法の基本的な方向となりますが、これらは糖尿病の予防だけでなく、糖尿病を発症してしまった方が守るべきことでもあります(ただし発症後の場合、厳しく守るべきルールの数はもっと増えますが)。
自分の標準体重に少しでも近づけるよう、つねに意識して全般的な生活習慣を改めていくことが、糖尿病予防のみならずさまざまな生活習慣病の予防策としても、有効に機能することになります。
糖尿病はもはや国民の5人に1人が該当するとされる、いわば「国民病」です。
いま健康な方にとっても決して他人事ではないということを、深く肝に銘じておきたいものですね。
参考サイト:
糖尿病ホームページへようこそ (厚生労働省)
糖尿病ネットワーク (株式会社創新社)
Diabetes.co.jp (日本イーライリリー株式会社)
糖尿病に関する参考サイト
- 糖尿病 4分でわかる食事と食事療法のポイント
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