糖尿病の概要~いまや国民の5人に1人の割合に
典型的な生活習慣病であり、その名をよく知られた「糖尿病」。
現代の日本において着実に患者数が増えつつある糖尿病という病気の症状の恐ろしさについて、実はその中身をよく知らないという方も案外と多いのではないでしょうか。
糖尿病は世界的にも患者数が急増しつつある病気ですが、日本人はもともと後述する「2型糖尿病」になりやすい遺伝的素因があるともいわれており、糖尿病の潜在患者数の増加は、欧米諸国よりも相当早いペースで進んでいる模様です。
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今日、日本の糖尿病の患者数は890万人、予備軍を含めると2,210万人と推定されています(国民健康・栄養調査 2007年)。
それにもかかわらず、実際に治療を受けている糖尿病患者の数はその10分の1程度、わずか237万人にすぎません(厚生労働省患者調査 2008年)。
治療を受けている人の数が患者数に比べて圧倒的に少ない理由として、糖尿病は初期段階で自覚症状がないために、そのまま治療を受けない人が多いからとも言われています。
健康診断ではじめて高血糖を指摘され、自分が糖尿病の予備軍であることに気づいてがく然とする方も多いようです。
膵臓(すい臓)でつくられるホルモン「インスリン」は、血糖値を下げる働き持つ唯一のホルモンです。
このインスリンの分泌や作用が充分でなくなると、血液中のブドウ糖が有効に使われなくなります。
そうなると血液にとけ込み全身のエネルギー源となる「ブドウ糖」の割合(血糖値)が高くなり(高血糖)、この状態が長く続くとひいては体内の代謝機能に異常をきたすことになります。
これが「糖尿病」で、血糖値が高くなると尿にも糖がでてしまうことから、この名で呼ばれています。
日本人は、遺伝的にもインスリンの分泌量が欧米人の50~75%程度だといわれており、もともとインスリン分泌不全からくる糖尿病になりやすい体質であることがわかっています。
また糖尿病の急速な増加の背景には、ただでさえインスリン分泌能力がそれほど高くない日本人の食卓の欧米化(肉食中心・高脂肪・高カロリー)が広く進み、高血糖が誰の身にも生じやすくなっていることもあります。
特に、いわゆる「メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)」は、インスリンの作用不足を招くことで高血糖につながりやすく、2型糖尿病の主な原因のひとつとされています。
糖尿病の真の恐ろしさは「合併症」にあり
代謝機能が異常な状態を長い間放置すると、体内の血管が詰まり、眼や腎臓・神経に障害が起こる、いわゆる「糖尿病性合併症」をきたすことになります。
この「合併症が引き起こされること」が、糖尿病においてもっとも恐ろしい点と言えるでしょう。
言い換えると、糖尿病との診断を受けたならば、その後の合併症の発症や進行を防ぐため、日常の生活全般に注意しつつ糖尿病の症状の管理(血糖値のコントロール)をしていかなくてはなりません。
特に初期段階では合併症の自覚症状に乏しいため、予防的に定期検査を受け、早期の治療対応をはかることが非常に大切です。
体内の細い血管が詰まった場合には、「三大合併症」といわれる眼(糖尿病性網膜症)・腎臓(糖尿病性腎症)・神経(糖尿病性神経症)に対する合併症が引き起こされます。
一般に糖尿病の発症後5年程度がたってからこれらの合併症にかかわる症状があらわれやすくなってきますが、症状があらわれた時は、すでにかなり進行しているケースもあります。
糖尿病が進んだため、失明・人工透析さらには壊疽(えそ)のために足の切断を余儀なくされた患者さんのお話などを、皆さんもこれまでどこかで見聞きされたことがあるのではないでしょうか。
また、体内の太い血管が詰まった場合は「動脈硬化」が引き起こされ、ひいては脳梗塞・脳卒中・心筋梗塞などを招くことになります。
さらには病気の進行によって体の抵抗力も衰え、感染症にもかかりやすくなります。
感染症によって血糖値が急上昇し、昏睡・けいれんの症状を呈したり、肺炎をこじらせたりする場合もあるため注意が必要です。
糖尿病の検査は、一般に血液検査による血糖値の検査からはじまります。
血糖値の検査は、空腹時検査とブドウ糖の負荷を与えた後に血糖値の変動をみる検査の、二種類を行います。
そこで糖尿病型と診断された場合は再検査となり、最終的に糖尿病であるかどうかが判断されることになります。
糖尿病は「尿に糖がでていなければ糖尿病ではない」と誤解されることが多いのですが、それは間違いです。
むしろ尿に糖がでている段階は、「糖尿病がすでにかなり進行している状態」と認識するべきなのです。
糖尿病とは「高血糖の状態が続く病気」であり、糖尿病を発症するかしないかのギリギリのところにいる「予備軍」は、現在の日本ではかなりの数にのぼっています。
そしてそのギリギリのところから転落して糖尿病を発症してしまうと、もはや完治することはできず、基本的には残りの一生を糖尿病とつきあっていくことになります。
ただし発症から初期の段階で適切な治療を受け、生活習慣を改善することで、健康な人とほぼ変わらない社会生活をおくっていくことが可能です。
血糖値をコントロールし、できるだけ正常値に近づけることができるなら、食生活や仕事・レジャーなどの日常生活上は、病気になる前とほぼ同じように過ごせるのです。
しかし「自覚症状がないから」と、治療もせずこれまでと変わらない生活をいつまでも続けていると、やがては上で述べたような恐ろしい合併症が、いつかその後の人生の行く手に必ず立ちふさがることになるのです。
加えて合併症を発症してからの治療は、治療行為自体も相当大変かつ困難になり、また透析やリハビリなどに一日のかなりの時間をとられることから、日々の生活の質が大きく下がってしまうことになります。
毎年行われる厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によれば、国内の糖尿病患者数は「2002年~2007年のわずか5年間で15%増」というハイペースで増加しています。
なかでも40~74歳の中高年男女の実に3割以上が糖尿病及びその予備軍と推計されており、この世代は今後ますます注意する必要がありそうです。
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糖尿病の種類~2型糖尿病が95%
糖尿病の原因・なぜ糖尿病になるのかについては、実はいまだきちんと解明されたわけではありません。
しかし糖尿病そのものではなく、「糖尿病になりやすい体質の家系」という意味で、やはり遺伝による部分もあるとされています。
特に2型糖尿病については、遺伝的要因に長期にわたる生活習慣の乱れが重なって発症するといわれます。
したがって家族や近い親戚に糖尿病の方がいる場合は特に注意し、日頃の生活習慣に気を配る必要があります。
糖尿病は、膵臓が障害をおこしてインスリンが分泌されなくなる「1型糖尿病」、あるいは妊娠の影響でインスリンの分泌が抑えられてしまう「妊娠糖尿病」など、いくつかの種類に分類されています。
なかでも糖尿病の95%以上を占めているのが、偏った食生活や運動不足などのいわゆる生活習慣が深く関わってくる「2型糖尿病」です。
1型糖尿病の割合は全体の1~3%にすぎず、また小児や若者の発症が多い傾向があります。
これに対し2型糖尿病は一般に40歳以上の肥満者に多く見られるとされますが、外見的にはやせていても2型糖尿病の患者は数多く存在しています。恐ろしいことに、肥満の子どもにも発症が見られるケースもあります。
肥満すなわち脂肪細胞が大きくなることによって血糖値が少しづつ上昇してゆき、膵臓が必要以上のインスリン分泌を迫られるために、最終的にそれに対応しきれなくなって2型糖尿病を発症するともいわれています。
2型糖尿病ないしその予備軍は、日頃の自覚症状が乏しいために、健康診断で指摘されてはじめて気づくというケースが圧倒的に多いようです。
数値でいうと、健診時に「空腹時血糖が110㎎/dlを超えた人」はギリギリのラインにいるということで「境界型」と呼ばれています(一般的な健康診断では、空腹時血糖のみを調べます)。
境界型の人はいわゆる糖尿病予備軍となります。
予備軍に属する人は定期的に検査を受けると同時に、生活習慣の改善にすぐにでも取り組むべきでしょう。
糖尿病の治療~中心となるのは食事療法
いったん糖尿病を発症してしまった場合の治療の基本は「食事療法」、そして「適度な運動」と「投薬治療」になります。
食事をとることでインスリンへの需要が高まるため、これを必要な範囲に押さえて、血糖値をコントロールする必要があるためです。
治療によって、合併症の発生や進行を防いでいくわけです。
日頃の生活習慣の状況などをかなり細かい点まで調査したうえで、医師に一日に必要なエネルギー量を処方してもらい、その範囲をきっちりと守った食生活を行う必要があります。
これを半年程度行い、それでも血糖値がなかなか下がらない場合に、インスリンの分泌や働きをよくする薬を併用していくのが一般的です。
投薬治療は、経口血糖降下薬(飲み薬)を使った「経口薬療法」と、患者が自ら注射して定期的にインスリンを補充する「インスリン療法」に分かれます。
とくに2型糖尿病では経口薬療法が中心とされ、インスリン療法は補充的に行われます。
いずれの療法も、血糖値を適正にコントロールすることが目的です。
ただし、糖尿病の内服薬はすべての糖尿病に有効なわけではなく、また量を過ぎたりあるいは食事量が少なすぎたりした場合には血糖値が下がりすぎる副作用(低血糖)を起こすことがあるので、服薬においては医師の指示と処方によく従うことが大切です。
なお、糖尿病の食事療法については関連サイト「糖尿病 4分でわかる食事と食事療法のポイント」「糖尿病の食事 この知恵が効く」をご覧ください。
ちなみに糖尿病の治療というと「インスリンの注射」をイメージされる方も多いのですが、これは一般に1型糖尿病の患者がインスリン補充のために行う治療法で、2型糖尿病では必ずしも必要とされないものです。
2型糖尿病においては、食事療法や服薬療法、それに運動療法を加えるやり方で良好な結果をもたらすことができるとされます。
高齢者は一般に投薬治療が多くならざるを得ないものの、薬さえ飲んでいれば食事療法や運動が不要というわけではありません。
ウォーキングや水泳などの適度な有酸素運動を続けると、体内の余分な糖分が筋肉で使われて血糖値が低下するため、インスリンの働きがよくなると共に体内代謝の改善にも役立ちます。
糖尿病の予防~イコール「生活習慣病全般の予防」
上述した糖尿病になるかならないかの「境界線上にいる方」がとるべき予防法のうち、もっとも重要なのが「食習慣の見直し」になります。
「カロリーオーバー→肥満→血糖値の上昇」という連鎖を、起こさないようにするためです。
具体的には、まず脂肪分の多いメニューを極力外すこと。
揚げ物や油を多く使った炒め物を控え、またアイスクリームや清涼飲料水など糖分が多く含まれた甘い物も原則避けるようにします。
過食を避け、ローカロリーで食物繊維を多く含む海草類や野菜を積極的にとるようにします。
ただし果物は糖質を多く含むため、控え目にしましょう。
食事時間も一日三食をできるだけ一定時間にそろえ、飲酒も適量にとどめる。
なるべくなら、週に何日かの禁酒日を設けるようにしたいものです。
タバコはさまざまな合併症を促進するリスクが高いので、節煙に留まらず禁煙を目指すべきです。
また運動療法としては、有酸素運動が効果的とされます。
通勤の行き帰りの一駅分を歩くようにするなど、体力に見合った適度な運動を、日頃から心がけるようにしましょう。
(糖尿病の運動療法については、関連サイト「糖尿病と運動 実行のポイントとコツ」をご覧ください。)
食事療法や運動の効果を確かめながら続けていくためにも、日ごろから定期的に、体重や血圧を測って推移を記録したりあるいは簡易検査キットを使って血糖値や尿糖を自分で調べるなどして、糖尿病への意識を高く持ち、できるだけ予防的にふるまいたいものです。
以上が食事療法・運動療法の基本的な方向となりますが、これらは糖尿病の予防だけでなく、糖尿病を発症してしまった方が守るべきことでもあります(ただし発症後の場合、厳しく守るべきルールの数はもっと増えますが)。
自分の標準体重に少しでも近づけるよう、つねに意識して全般的な生活習慣を改めていくことが、糖尿病予防のみならずさまざまな生活習慣病の予防策としても、有効に機能することになります。
糖尿病はもはや国民の5人に1人が該当するとされる、いわば「国民病」です。
いま健康な方にとっても決して他人事ではないということを、深く肝に銘じておきたいものですね。
参考サイト:
糖尿病ホームページへようこそ (厚生労働省)
糖尿病ネットワーク (株式会社創新社)
Diabetes.co.jp (日本イーライリリー株式会社)
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糖尿病に関する参考サイト
- 糖尿病の食事 この知恵が効く
- 糖尿病 4分でわかる食事と食事療法のポイント
- 糖尿病と運動 実行のポイントとコツ
- 糖尿病の薬とその種類 基本が知りたい
- 動脈硬化を学ぶ~その概要・予防・食事
- コレステロール 下げる対策 3分レッスン
- 特定健診と特定保健指導 3分でポイント理解
- 高血圧~その症状と食事・生活習慣による予防
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- 高脂血症、何が問題か~原因と治療(薬・食事・運動)
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- 脂肪肝の症状と治療 食事療法と運動
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